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部屋についた。週末の深夜である。翌日は休み。悪酔いする準備はできていた。俺は赤ワインの封を切り、キャップを外して直接ラッパ飲みをした。グラスなど使わぬ。やさぐれた飲み方をしてこそのヤケ酒であろう。
舌を刺す酸味、あとに残る渋み、胃を直撃する不快感、そんな身体的苦痛を、俺は期待していた。俺の失恋に傷ついたハートは何かそういうものを求めていた。癒しではない、世界に向かって俺はこんなに傷ついていますよと訴えるための形式、やさぐれた気分の可視化、絶望の自己表現。
ところが。それらを俺に与えてくれるはずの、一口目が。
あろうことか、ウマいのである!
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