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同居人
曇った窓硝子の奥で、丸い頬の中年がじいっとこちらを見ている。柵からはみ出た枝葉の中から、右折の機会を伺い、白いワゴンがのそりと這い出る。車体の陰に生じた脇道を抜け、小路を走った。奥まった路地に私の家はあった。速度を徐々に落とし、家と平行に中古原付を付ける。エンジンを切る。ミラーは前方の畑を映し出している。背を掴み、内側に巻いて固定した。
磨り硝子の向こうで、尻尾の影が揺れる。滑りの悪い戸を開けた。茶色い毛むくじゃらが、絡みついてきた。冷たいフロアリングを踏み歩く。野太い鼾が聞こえる。
ソファには、黄色い塊が寝そべっていた。黄ばんだ肌に、これ又黄色い、着古したワンピースを被っている。長い髪が、まっさらな床に垂れる。ソファには、酸っぱい匂いがしみついていた。
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