八月十一日

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 物の怪の数が多過ぎる思っていたから(嫌だけど)納得した。    でも、還しても還しても新しく別の物の怪が入ってきて、いたちごっこだ。  シロガネは陰陽道にも詳しい。  物の怪化したことで妖力も得ている。  入口を塞ぐくらいできそうなものだ。 「誰かさんが溜まりに溜まった雑魚をしっかり集めなかったから数が底上げになるんだよ」 「オレはてめぇのせいで抵抗力がゼロなんだよ! そもそも視えなきゃこんなことになってない」  去年は捕獲した物の怪を帰している最中、侵入してきた他の物の怪のせいで一週間は寝込んだ。「霊感の遺伝まで責任持てるかよ」言いながら、ふたたびベッドに寝そべるとシロガネは新しい酒瓶を開けた。  百歩譲って隔世遺伝は仕方ないとしても、その視える体質を悪化させたうえに平穏な生活を台無しにしたのは誰だよ。  町にはびこる物の怪をほったらかしておいても住人に被害はないが、このままだとオレが昇天されてしまうだろう。 「ま。地道に還すのが互いのためよ。こっちにもあっちにも」  何が互いのためだ。  どう考えたってオレ個人には不利益しかない。 「せいぜい泡沫がぶつからねぇことを祈るこったな」 「うたかた?」  泡ってなんだよ。  海じゃあるまいし。  泡同士がぶつかるなんてあり得ないだろ。  クソジジイのくだらない文言を聞き流して、オレは明日提出する課題の続きに集中した。    
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