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「ああ、あの時、幼稚園の頃のことか。あれは衝撃的だったね。まさか、幼稚園児の前で、BL。しかもがっつりエロアリを読むなんて、びっくりだった。」
「ええ、あの時、確か、陽咲は何も見ていないって。」
「あれはとっさについた嘘。本を閉じたとはいえ、運悪く机の下に落ちて、なぜかたまたま例のページが上に向けられて落ちるなんて奇跡が起こったせいで、つい見ちゃったの。見たら忘れられないでしょ。ふつう。あんな濡れ場のシーン。」
「確かに。」
「こう思うと、私たちって、案外あの母親にして、普通の育ったよね。」
「ソウデスネ。」
あの母親にして、この娘アリ。双子の妹の陽咲もだいぶ問題ありの娘だった。
幼稚園の一見以来、母親は私たちに見せつけるようにBLを読むのを控えるようになったが、それも限界だったらしい。小学高学年になるころに、告白された。
「お母さんは、腐女子だから、こうならないように、反面教師として生きていきなさい。」
腐女子とは何かをしっかりと説明され、そうならないようにとくぎを刺された。小学校高学年とはいえ、まだまだ子供の時期に、なんて告白をするのだと、戸惑いを隠せなかった私だが、妹は特に動じず、わかったと返事を一言こぼすだけだった。
それ以来、母親は自らが腐女子であることを隠さなくなった。私たちの前でも堂々とBLを読むようになった。すでにやけくそなのか何なのかわからないが、過激なBLも隠すことがなくなった。
じわじわと腐女子の波が家族に押し寄せてくるのだった。しかし、頼みの綱の父親はすでに母親に毒されていて、特にその奇行を止めるようなことはしなかった。
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