1.専属秘書

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エレベーターが6階で扉が開く。 6階といえば資料室とか会議室があり、速水さんと一緒にとある資料室に入っていく。 部屋に入ったところでようやく私の方に振り向き、 「市瀬さん、といったかしら。」 「はい。秘書課所属市瀬美桜と申します。」 「そう。私は速水芹佳。」 「存じております。速水課長。」 「私のことは速水でいい。ビジネス上つけるのが常識だから社内でもつけろと言う人もいると思うけど、私はいらないから。外ではさすがにつけてもらうけど。」 「分かりました。では普段は速水さんとお呼びします。」 確かに同じ管理職でも社内ではつけろと言う人もいるし、別にいらないと言う人もいたりする。 なるほど、人によりけりなんだ。 「私としては不本意だけど。まずは2週間、きっちりやってもらいます。でもあくまで仮なのは忘れないで。」 「はい。ですが関係ありません。仮であろうと本気でサポートしたく思います。」 「そう、わかった。ちなみに今抱えてる案件ははどのくらいで終わりそう?」 「3日以内には。」 「なるべく優先していいから早く終わらせて。この数日は私のやり方や仕事を把握してもらいます。このあとメールで色々と送るので目を通して頂戴。」 「はい。」 速水さんは淡々と説明してくれる。 その姿は秘書課だけじゃなくていろんな先輩から聞く姿そのものと言える。 なんかこう、感情が乗っていないというか。 人より機械的というか。 多分、こんな話し方をするから余計に一匹狼という噂に尾ひれがついているのだろう。 印象も明るくはないはずだ。
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