1.専属秘書

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「ん?」 ふと視線を感じてメモから顔を見上げれば、速水さんがじっとこっちを見ていた。 何か気に障ってしまったのだろうか? 「えっと?」 「何でもない。それじゃああとは明日。」 そう言って私の反応を見ずにエレベーターに乗ってしまった。 これは多分、一緒に乗らないほうがいい。 速水さんは秘書と一緒にいることは一切ないから絶対噂になるし。 この会社、噂とか社員についての情報が異様に早いんだよね。 誰が一緒にいたとか。 誰がミスをしたのか。 誰が誰を狙ってるとか。 「はぁ、くだらない。仕事しよ。」 そう。 くだらない。 そんなことを噂する暇があれば仕事をすればいいのにと思う。 噂はただの噂でしかないのだから。 たとえ一目見たとしても…その後は尾ひれしかつかないのだから。 だけど………。 私は、ちょっと甘く見ていたのかもしれない。
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