1.専属秘書

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ーーー 私が勤めている会社は基本的に定時退社しても何も言われない。 だからといって過度なものではない限り、残業もとやかく言われない。 「美桜!」 「巴…?」 「一応17時30分だから知らせておくね。」 「え…。」 腕時計をすぐ確認してみれば言われた通りの時刻を少し過ぎたところだった。 定時は17時。 もう30分以上残業していた。 「今日はどうしたの?一段と集中してたけど?」 「んー、ちょっと張り切っちゃって。」 「あれ、それ……経理の?」 「うん。もう終わるから。」 「え?3日くらいかけてやるものって言ってなかった!?」 「事情が変わったから。」 そう言いながらも再びパソコンに向き合う。 そんな私を見た巴はため息をつきながらも隣の自分の席に座って…。 「そのファイル、送って。」 「え?」 「見たところそのページを入力するだけでしょ?」 「でも、これ。」 「今日の仕事は終わってるし、これでも経理課長の専属してるからこれくらい手伝えるし、本来は手伝いとはいえ、経理の人でもない人にさせるものじゃない。それに終わったら最終的に管理職の確認いるから私が直接渡した方が早いわよ。美桜、どうせあんたのことだから提出したい書類があるんでしょう?この時間ならまだいると思うよ。」 そうだ。  巴は経理課長の専属だからこれくらいの書類仕事はいつもやってる。 全く…。 やっぱり噂は広まってるし、巴にはバレバレかな。 「うん、ありがとう。ちょっと行ってくるね!」 急いで巴にやりかけの仕事を送って、別のファイルを開いては印刷をする。 行き先は勿論。 営業課のあるフロアだ。
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