1.専属秘書

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管理職はみんなのいるフロアに専用の小部屋を持っている。 それは速水さんも例外ではない。 コンコンコンとノックをしてから。 「失礼します。」 「………市瀬さん?」 突然私が来たことに驚いたのか、一瞬キョトンとした表情を私は見逃すことなく。 いつもきりっとしている分、可愛らしく見えた。 「もう18時よ。」 そんなことを言ってる速水さんも18時だというのに終わる気配がない。 「えぇ、分かっています。でも…すぐにでもお渡ししたいものがありまして。」 手に持っていた書類を渡す。 それを後回しにせずにすぐに目を通してくれて。 「あなた…優先すべき仕事はどうしたの?」 「全部終わらせています。」 「本当に?」 「………経理の仕事だけ残り2割ほどあったのですが同期の空木さんが代わって下さいました。経理の重要なものだから経理に関わってる人がやったほうがいいということでして。」 「そう…。」 渡したものは数日後のプレゼンで発表するための資料だ。 自分なりに重要そうなところなど色々とアレンジしてしまったけど。 「この資料については明日伝えるわ。」 私の作った資料を一切見ずにそれだけを伝えると再び自分の作業に戻ってしまう。 これ以上話しかけてもしょうがないかもしれない。 「では一旦失礼します。」 そう言って私は部屋を出ていった。
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