another.1 秘書課の人気者

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この気持ちに、前から持っている想いに。 他人に興味がないとはいえ、さすがの私でも素直に認めている。 私も他の人と同様に市瀬美桜に魅せられている。 いいえ、その先。 私は恋をしている。 容姿なんて二の次。 きっかけはきっと些細なものだけど私にとっては大きいことだった。 少し違和感を感じた時から、誰かが彼女の噂をしただけで自然と耳に入るようになって。 彼女がいるだけで、視線は釘付けになる。 だからこそあの時次長の部屋で彼女を見た途端、心臓が飛び出そうになった。 意識していることがバレないように気持ちに蓋をしながら次長と話して。 その分嬉しい反面苦しかった。 本当にこの話は断りたい。 でもあの子と関われることが嬉しくて受けたい自分もいる。 これは仕事。 だからこそ本気でやらなければいけないし、こればかりは個人的な感情一つで決めることはしない。 あの子が私の望む仕事をこなせないのであれば容赦なく切らせてもらう。 たとえ、今後二度と関わることがなくなろうともこの件については妥協するつもりはない。 ……なんだけど。 「割り切れない……!!」 今日だって、あの子に少しでもできる人だと思われたくて出先の仕事を早く終わらせたし。 逆に事務仕事だってあの子に関係のある話が聞こえたら集中力切れるし。 だからさっきは不意打ちだった。 私が送ったメールをもとにすぐ資料作成をするとは思わなかった。 ってかあの子がここに来るだけでも顔がニヤけそうになって必死に堪えていた。 それだけじゃない。 あの子の作った資料が見たくてすぐにチェックしていたところを見られそうになったから焦った。今度こそ帰ったと思ったのに…。 珈琲のためにまた来てくれて。 「うぅ…苦い……。」 砂糖とミルクをそれぞれ入れたけれど、甘党の私にはまだまだ足りなかった。 でも今はこの苦さが丁度いい。 この甘ったれのスイーツ思考にはもってこいの苦さだから。 あ、でもこれからは彼女の珈琲を飲むことができるのなら苦くても……。 「やっぱり苦い……。」 全然我慢できそうにない。 「はぁ…仕事しよう。」 とか呟きつつも他の案件よりも市瀬さんの資料を手にする私はどうしようもないと思う。 結局私が会社を出たのは21時になりそうな時間帯だったのは、守衛さんしか知らない。
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