2.完璧主義

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「おはようございます。」 すれ違う社内の方々に挨拶をする。 もちろん全員知っているわけではないけれど、私は朝と帰るときの挨拶はしっかりするようにしている。 仕事モードに入ると誰も話しかけてこないし、私も視野が狭くなるから。 「市瀬さん、おはよう。」 「はい、おはようございます。」 「市瀬さん、オシャレのカフェが…。」 「おはようございます、お昼に行けたら覗きたいですね。」 時々こうやって関係ないことを言われるのだが、大抵こう言えば黙る。 私が巴以外の誰かとお昼に行けるなんてほとんどないのだから。 「あぁー!市瀬さん!」 「え?おはようございます、三田村さん。」 「もしかして例の件、受けてくれるの?」 張り上げた声を出してきたのは営業課の三田村さんという男性社員。 以前からちょくちょく仕事を持ってくる人でそれなりに交流がある人だ。 「あーいえ、その件はお断りしたとおりです。」 「えー、ほんの少しでもだめかな?」 「はい。近いうちに通達があるかと思いますけど、今後は仕事を受けられないのです。」 今回も仕事を頼まれたのだが、断った。 私が断るなんてほとんどないものだから少し食い下がってくるんだよね。 「それより速水さんは出社してますか?」 「は、速水課長だって…!?」 無駄に声が大きい人だからその一言で周りにいた営業課の人たちが一斉にこちらを見た。 どうやらここでも同じことが起こってるらしい。 「えーと…君が速水課長にどのような…?」 当然の質問なんだけど、どこかわざとらしい。 取り繕ってもバレバレなのよね。 「ちょっと用事がありまして。」 「そ、そうか。用事…ね。」 でも秘書課と違って強引には聞いてこない。
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