2.完璧主義

4/14

268人が本棚に入れています
本棚に追加
/61ページ
速水さんは一匹狼である。 これは誰もが認識している共通事項。 先程のような速水さんの反応はきっと一匹狼と言われる由来の一端でもあるだろうな。 「失礼します。」 上司と一緒に入るときでも一言は忘れない。 部屋に入るなり速水さんは、カバンからファイルを取り出す。 「あなたの資料、見させてもらったわ。」 「ぁ…。」 先日見たときよりも付箋が増えてる。 それも大量に。 ヤバい。 これは完全にアウトなやつだと思う。 手を抜いたわけじゃない。むしろ全力。 でもこれは…。 「結論から言えば、全然駄目ね。」 「はい…。」 資料を受け取ればすぐに付箋のページを確認してみる。だけど付箋だけで何か訂正されている跡とかもない。 「やり直しのページだけ付箋を貼ったわ。残りはそのままでも悪いまではいかないのだけれども。」 甘かった。 今までこうして思い切り返されたことはない。 それどころかいつも絶賛してくれて、わざわざ仕事を頼んでくれていたくらいだった。 いつもどおりでは通用しないだろうとは思っていた。だけど…心のどこかで自信と傲りを捨てきれていなかったのだ。 「……。」 悔しい。 でも顔に出すな。 秘書たる者、いかなる時でも常に冷静であれ。 「ありがとうございます。すぐに修正いたします。」 「そうして頂戴。貴方にお願いした資料の内容はプレゼンでも話そうと考えているの。プレゼンまで日数もほとんどないの。」 「はい。それでは失礼します。」 「……えぇ。」
/61ページ

最初のコメントを投稿しよう!

268人が本棚に入れています
本棚に追加