0.とあるお昼での会話

3/5
前へ
/61ページ
次へ
だいたいお昼休憩は12時から13時に取る人が多い。そのため食堂や机のあるスペースは満席だったりもするのだけど、幸いにも空いていた。 食券でレディースランチと大盛りを選択する。 それをおばちゃんに渡すだけで食事ができることだけは学生のときと変わらない。 「あんたくらいよ…レディースランチを大盛りで注文する人は。」 「え?そんなことないんじゃないかな?」 今日のレディースランチは鳥の胸肉をつかったヘルシーフライだ。うん、美味しそう。 「巴は偉いよね。毎日お弁当作ってるのは。」 「意外と節約にもなるからね。毎日でも半分は昨日の残り物だけど。」 「あー節約できるのはいいよね。毎日ワンコインの上に大盛り料金追加は思ってたより掛るから。」 「だったら作れば?美桜、料理できないわけでもないでしょ。」 「料理は好きだけど無理。8割食べ損ねる。」 大盛りの白米を口に運びながら、実際にお弁当にした場合を考えてみる。 だけど一瞬であり得ないと結論に至る。 「それもそっか。」 巴も納得している。 料理は嫌いじゃない。むしろ好きだし、普段自炊してるくらい。 それでもお弁当を作れない理由は別にある。 「それよりもいつもごめんね。」 「いいって。美桜の集中力はすごいし、尊敬しかないんだけど……無理矢理にでも一旦止めないと、とことんやっちゃうでしょ?私だってお昼は美桜と食べたいもの。」 そう。 私はどうしても深く集中してしまう癖がある。 なんというか…昔から何かやるのであれば徹底的にやりたい派だった。 それが仕事でも自分なりの区切りまでやりたいと思うと、会議など次の仕事の時間までみっちりやってしまうのだ。 私の中ではお昼休みは優先度が低いため、過ぎてしまうことがほとんど。 先輩たちも私が集中しすぎて逆に邪魔ができないと思ってしまうらしく、今では巴以外ほとんど声をかけて来る人がいない。 そのとき以外だったらよく話しかけてくれるのだけれども。 「美桜、このあとの予定は?」 「んーと。今度のプレゼン前会議にお得意さまの来訪。あとは経理と人事部のお手伝いかな。」 「ひゃあ。すごいスケジュール。さすがは我が秘書課で有能すぎて複数からシェアされてるエース。」 「言い方…やめてよ。私は巴みたいに専属秘書をしたいけど。」 通常、雑務以外新人除く秘書課に所属している人は誰か個人の秘書だったりする。 だから一人のサポートが普通。 でも私は、ありがたいことに複数からオファーがあるためどうしてもスケジュールがいっぱいになってしまうのだ。
/61ページ

最初のコメントを投稿しよう!

267人が本棚に入れています
本棚に追加