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「巴ちゃん。」
そんなとき、横から聞き覚えのある声がする。
「お疲れさまです。あれ、朝からここにいるのは珍しいですね、由美さん。」
「今日社長は有給だからね。一日事務処理かな。社長室よりもこっちのほうが捗るし。それよりも時間平気?経理部長と外回りでしょ。」
「時間は…はい。今から行きます。」
「いってらっしゃ~い。」
巴にしては珍しいと思った。
意外と時間には几帳面なところがあるのでギリギリになるなんて彼女らしくない
「さてと。美桜ちゃん。」
「はい?」
まさか声をかけられるとは思ってなかったので、少しだけマヌケっぽくなってしまった。
「力みすぎ。肩の力を抜きなさい。」
「えっと…。」
「まるで少しでも対応を間違えたら人質が殺させる交渉人みたいよ?」
どうしてここにいる人たちはみんな例えが物騒なものばかりなのよ。
爆弾から人質に変わっただけよ。
「それでどうしたの?美桜ちゃんがそんな風に殺気立てるなんて珍しい。」
「そんな珍しいなんて…必死なのはいつもですよ。」
「新人のときから卒なく仕事をこなしてた子が何を言ってるのよ。」
美化されてるなんてツッコんでも無意味だろうなぁ。
ただ必死でついていくだけで結構いっぱいいっぱいって言っても信じてもらえなさそう。
「別になんでもないですよ。」
つい突き放したような言い方になる。
基本的に他人は他人と考えるから気にしないのだけれど、この人と巴は別。
由美さんのような仕事のできる人に少しでも早く認めてもらいたいから。
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