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「なるほどねぇ。」
「すみません、こんな資料を見せてしまって。」
「うーん。とりあえず美桜ちゃん、肩の力を抜きなさい?」
「え?」
改めて言われる。
そんなガチガチだったのかな。
「大丈夫。美桜ちゃんはいきなりダメ出しで過剰に反応してるだけ。修正箇所があるってことは良くなるってことなの。」
「それでも一発でクリアできないとか…自分で納得できませんよ。」
「この完璧主義者め。営業の秘書は初めてでしょう?今まで手伝っていたものは内部資料だったし、初めはできないのが当たり前。中にはそれこそ修正しようがない1から全て作り直さないといけない資料モドキだって多いのよ?」
ここが秘書課フロアであることお構いなしにズバッと言う由美さん。
普通はお咎めが入るのだけど、完璧な由美さんだからこそ誰も何も言えないのだ。
「力みすぎると空回りしちゃう。いい?まずはゆっくりと頭を使うの。」
「ゆっくり…。」
「完璧主義の美桜ちゃんのことだから、営業について1から学ぼうとしてたでしょ。」
それは図星だった。
返事をする変わりにムスっとした顔を向けるしかなかった。
「やっぱり。そういうのは相手の仕事ぶりから学びなさい?いいこと?美桜ちゃんは営業員ではなく秘書なの。営業のサポートではなく相手のサポートが仕事。その営業そのものではなく、その人をどうしたら手助けできるのか。喜んでもらえるのか。どう反応してほしいのか。その人のことを考えること。」
「仕事ではなく、その人のために……。」
「そう。資料作成もしかり。どうすればいい資料ができるのか、ではなく。どうすればその人の求める資料になるのか。そう考えること。その資料はどういう場面で使うかは把握している?」
どういう場面で…。
一つ一つ速水課長から言われた言葉やメールの内容を思い出す。
確か……。
『貴方にお願いした資料の内容はプレゼンでも話そうと考えているの。プレゼンまで日数もほとんどないの。』
あ……。
プレゼンで資料の内容を話そうと考えていると言っていた。
これはつまり……。
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