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「近い日に行われるプレゼンに話すって言っていたので、おそらくそのときに配布するものかと思います。」
「そうね。プレゼンするときはほぼ必ずと言っていいほど手元に資料を見てもらいながら行う。それも場合によっては内部の人だけじゃないの。」
内部じゃない人とは社外を指す。
もしかしたらプレゼン自体、実際に取引の場そのものの可能性だってある。
そのための資料。
すぐに自分の資料を見直すと、付箋ページを中心にあることに気付く。
“私が作った資料は内部者が見る前提になっていること”
その他のページは専門用語などは少ないものの第三者から見てもギリギリ理解できる範囲だと思う。
「そっか…だから速水さんは思い切りダメだと言ってくれたんだ。」
「へぇ…。」
「由美さん?」
「何でもないよ。少しは落ち着いたかな?」
「はい。」
やっぱり由美さんはすごい。
自分のことだけじゃなくて、ちょっと私の話や仕事を見ただけで的確にアドバイスをくれる。
それに比べて私はまだまだ視野が狭い。
「頼るばかりじゃ駄目だけど、美桜ちゃんは一人で抱えすぎね。もう少し周りを頼りなさいな。」
「はい。いつもありがとうございます。」
「素直でよろしい。そんな美桜ちゃんにいいことを教えてあげよう。」
少しニヤリとした由美さん。
こんな時、大抵いいこと……なのかな…誰かについて教えてくれるんだよね。
「速水課長はね、根拠もなくダメ出しはしないの。必ずそこに理由がある。確かに今回みたいな丁寧に修正箇所とかはっきり指摘することはほとんどないわ。でもね、裏を返したら初仕事にしては上出来とも言える。」
「はぁ。」
確かに噂のような理由もなく突っぱねることはしないとは思うけど。
「まぁいつか分かるよ。とにかく自信を持ちなさいな。」
「はい。」
由美さんが言うならきっとそうなんだ。
今は気にしないことにしよう。
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