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「遅くにすみません。今日指摘して頂いたところを中心に資料を作り直したので、チェックお願いします。」
「え?」
思いもよらない事態で声が漏れる。
今なんて…?
作り直した?え、もう?
何が何でも早くないかしら?
色々と指摘したのは朝。
直ぐに訂正できる量ではなかったはず。
早くても明日以降だと思ってたのに。
「これからまだやること多いですか?」
「え?」
え、私の予定?
確か今日は今やってる報告書をまとめたら終わりの予定…だけど。
「そうね、まだまだやることはあるけれど…時間はなくもないわね。」
違う!
なんなの、今の言い方は!
どうしてどうでもいい見栄を張ってしまうのよ!私!
作業が遅れているだけで、もうやることは今の報告書だけなのに。
「なら…少しでいいので目を通して下さいませんか?その、少なくとも前よりいいものに…速水さんが求める資料に近づけているかどうか簡単に知りたくて…。」
少し恥ずかしそうに、それでも確固たる意思を感じられるお願い。
きっと緊張でアドレナリンが出ているのか顔が少し赤みを帯びている。
そんな彼女がすごく可愛くて…胸が苦しくなる。
このドキドキが伝わらないようにするだけでいっぱい。
「いいでしょう。簡単にだけ見ます。そのまま立ちっぱなしもなんですから、こちらに座って。」
私が座っている隣の椅子に座らせる。
彼女が座るのを視界の端で捉えてすぐ資料を捲る。
正直あれだけはっきり言ったのは、思ったままであることとあえて厳しくして私の秘書は難しいと示すためだった。
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