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今まで同じことをしてやり直させても、決して私の求める水準までできた人はいない。
正直自分でやりたいし、邪魔でしかない。
だからこそそこまで期待はしていなかったけれど。
「(え…これ。)」
目を通した瞬間、驚きと焦燥感が広がる。
前回とは全く異なっていた。
これは手直したとかそんなレベルじゃない。
言葉通り、全て作り直している。
それにまだまだ荒削りなところはあるけど、クオリティが段違いに違う。
これほどのものを作るのに、どれほど考えたの。
また私にひどく言われるとは思わなかったの。
それもたった一日で……。
チラリと彼女の方をバレないように見る。
変わらず赤くしている頬。
期待と隠せていない不安気で微かに潤んだ瞳。
そんな彼女に。
「まだまだ直したほうがいいところはあるけど…格段と良くなっているわ。だから、そんな顔をしないの。」
数回撫でるだけで見た目以上の艶とふんわり感が伝わってくる。
これだけで彼女がどれほど髪の手入れをしっかりしているのかが分かる。
「えっと……あの、速水さん。」
「何?」
「すごく嬉しいのですが…ちょっと恥ずかしいです。」
「あぁ、ごめんなさいね。すごく不安そうな顔をしていたからつい…ね。」
「いえ…。」
「とにかくよくなっているのは事実だから、細かいところは明日しましょう。今日はもう上がって。」
「分かりました。お疲れさまでした、お先に失礼します。」
まだ少し赤い顔をしながら部屋を出ていく彼女を見送る。
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