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「芹佳もまだまだねぇ?知ってるのかと思ったけどそうでもないのね。美桜ちゃんのBIを担当したのは私。」
「市瀬さんの新人教育を?」
「うん。基礎から応用まで。容姿から観察眼まで鍛えたわ。」
なるほど。
それなら少し納得かも。
本城さんのしごきを耐えたくらいの忍耐力。
気遣いから仕事の内容まで。
社長秘書にまで抜擢される人に叩き込まれたのなら…。
「だから美桜ちゃんのことは知っているし、頑張る姿についつい撫でちゃうし。美桜ちゃんの数少ない相談相手なの。」
「自分で言うのですね。」
「事実だもの。」
例えそうだとしても…。
ビジネスインストラクターはその人にとってある意味特別だということは分かるけども…。
嫌なものは嫌。
「私からも一つ聞いてもいいかしら?」
「なんですか?」
「美桜ちゃんの作った最初資料。どうして即却下したの?修正箇所はいくつかあれど、合否で言えば明らかに合格だったはずよ。」
やはりこの人は気づいてしまった。
市瀬さんの新人教育者と知った瞬間、この件も知っていることを連想するのに時間はいらなかった。
絶対突っ込んでくると思った。
そう。
市瀬さんが最初に持ってきたものに容赦なくダメ出しして返したけれど、正直あれを見て見事なものだと思った。
最初でここまでのものを仕上げてくるなんて誰が思った?思わないでしょう。
「最初であれほどまでのものを作れるなら、もっといいものに仕上げられると思うのは自然のことだと思いますよ?」
私が却下したのは多少は私情もあったけど、修正させたらもっといいものを作ってくると思ったから。
こんなもので満足してほしくない。
個人的には遠くから見てるだけで良かったから仕事上でも極力関わりたくなかったけど、この才能を潰したくない気持ちが上回った。
伸びしろがあるから、それを育てたいって思うのは純粋な気持ち。
「ふぅん?確かに美桜ちゃんは才能の塊だからねぇ。それでももう少し優しくしてあげたら?」
「これが私ですので。」
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