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「それもそっか。それで?決めたわけ?あの子を秘書にするの?」
「まぁ、一応私の望む水準を越えてますし。」
「なるほどねぇ。本音は?」
ニヤニヤしながら私を見てくる。
そんな彼女を横目で見ながら。
「あれだけの有能株を腐らせるくらいなら、一旦はそばに置いておこうかと。」
「それだけとは思えないけど?」
「……。」
「すごく可愛い上に仕事もできる好きな子を他の誰かに渡したくない、とでも言いたい顔をしてるわよ?」
「妄想はほどほどに。それからいちいち声に出さないで下さい。不愉快です。」
思い切りにらみつけるけど、この人には全く効いていない。
だけど私にはこれ以上の反論なんてできない。
だってこの人の言った通りだから。
見てるだけでよかったのに。
仕事に一生懸命で、可愛くて。
初めて見る照れたあの子。
あれが決定打だった。
あの反応を見るのは私だけがいい。
私情を挟んではいけないのに、手放して私じゃない人に色んな表情を見せているところを見るなんて……とてもじゃないけど耐えられない。
「本城さん、決して余計なことを市瀬さんには言わないように。」
「分かってる分かってる。黙ってた方が面白…お互いのためだものね!!面白いし!」
「言い直した意味のなさ。」
これから嫌な笑みを向けられることを考えるだけで憂鬱だわ。
でもまぁ、面白がってる分ある意味喋らないって信用もできる。
皮肉な話だけれど。
「それでいつまでここにいるのですか?」
「えー、まだいいじゃん。」
「邪魔です。仕事が終わりません。」
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