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「ちぇ。今日はここらへんで勘弁してあげよう。」
今日はってことはこれからもただの冷やかしのために来るってことかしら。
……カメラ付きのインターホンでもつけようかな。
「今絶対ろくな事考えてない。」
「……。」
「もぅ睨まないでよー。これからは静かに見守ってあげるから!また来るね!」
できれば今日のことは忘れてほしい。そして用事のない限り来ないでほしい。
でもそんなことは無理なのもよく分かるので、黙って出ていくのを見る。
「はぁ…。」
なんだかいつもの倍以上疲れた。
絶対本城さんのせいだ。
あの人が絡むとろくな事がないわ。
「市瀬美桜。」
好きな子の名前を呟く。
今度こそ聞いてる人は誰もいない。
本城さんは名前で呼んでいた。BIと教え子の関係なら距離も近いだろう。
市瀬さんも本城さんのことを名前で呼んでいるのだろうか……。きっと呼ばせてるわよね。
「美桜…。」
私が下の名前で呼んだら、返事をしてくれるのかな。仲良くなれば私のことも名前で呼んでくれるようになるかしら。
いや、やめよう。
私と市瀬さんは上司と秘書。
仕事だけの関係であって、仲良くなるなんてない。
これからはそばで仕事ができることを素直に喜ぶとしよう。
ただ密かに想うことだけは、許されるはず。
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