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「市瀬さん、準備は?」
「はい。15時にはクライアントの皆様がご来店頂けるよう、11階の広めの会議室を用意しております。またお飲み物として珈琲、紅茶、ノンカフェインの麦茶を。それぞれのお好みに合うように予め各々砂糖の数やミルクの有無も本日のお茶係に指示してあります。」
「宜しい。お帰りになるときのタクシーの用意は?」
「あ…申し訳ありません。タクシーはおさえてあるのですが、時間はまだお伝えできてません。」
「それでは遅い。次の行動が遅れる原因にも繋がるし減点ポイントね。今日のクライアントはお得意様で役員クラスがわざわざ来てくださるの。お客さまを相手にするときは、向こうの都合も先読みしないと。」
「はい、すぐにお伝えします。」
「そうして。会議が終わる時間帯は伝えてあるわね?おおよそ5分から10分前には来てもらうように。」
「はい。」
言われたことはひたすらにメモを取る。
それと同時にその後の予定や速水課長の仕事内容も把握すべく、頭の中で整理していく。
あれから私は、正式に速水さんの秘書として任命された。
本来2週間は試用期間のはずだったが、速水さんの意向で1週間早く正式に決まったのだ。
宮島次長によると、あの資料の1件で正式採用を決めたから、試用期間をだらだら続けるより1秒でも早く仕事を叩き込む方がいいとのこと。
その時頭で納得はしたのだけど…言葉通り、身体に直接叩き込まれているのが現状で。
正直考えてた数百倍のキツさを感じている。
「市瀬さん?」
「あ、すみません。気を引き締めます。」
危ない危ない。
秘書たるもの、常に冷静であれ。
求められるのは今までの私じゃなくて、常に成長をし続ける私。
速水さんに追いつけるほどの実力。
本当に危なかった。
思わず嬉しさが顔に出てしまった。
この忙しさ。
この仕事の多さと求められる努力。
完璧を求めるこの人に認められたら…そう考えるだけでやばい。
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