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「その反応。むしろ増えてるわね?美桜ちゃん。」
「あー…えっと。」
さすがはエース様。
隠し事なんて、できないや。
「市瀬さん、いつ。」
「え?」
「何かしらアプローチがあるわよね。少なくとも私と一緒のときなんて挨拶以外声をかけられることはほとんどないのだけれど?」
「えっと一人でいるときとか…メールとか…。」
「あーそれで時々席でしかめっ面してたの?」
「……うん。」
まさか表情に出てしまっていたとは…。
巴は元々よく小さな変化にも気付くけれど、露骨だったかな…。
秘書失格だ、これでは。
「なんというか…断りとはいえ返事をするのも憂鬱ですし、メール溜まっちゃうから見ないわけにもいきませんし…。」
事実ちゃんと見ないと重要なメールを逃してしまう危険がある。
それに憂鬱な理由はそれだけじゃない。
内容としても頼んでもないどうでもいいアドバイスの他に…速水さんを理由にした誘いばかりなのだ。
あの人の秘書は大変でしょ、愚痴くらい聞くとか。
無理難題なこととか言ってくれたら、力になるとか。
尊敬している人をそんな風に言うだけでなく、あわよくばという見え透いた薄汚い下心。
これを見るたびに辟易とする。
私は決して無理難題を言われてるわけじゃないし、速水さんのようになりたいのに愚痴なんかあるわけがないのに。
「ははん?鉄壁は今でも健在なのね?」
「その呼び方はやめてください。」
「鉄壁?」
「美桜ちゃんは誰の誘いにも乗らないの。その隙のなさから影で鉄壁と言われてるのよ。」
「確かにそうだよね、美桜って必要以上の誘いには乗ったことないよね?私と由美さんくらいじゃない?」
「うーん。尊敬してる人以外は興味ないし、今もスキルアップすることしか考えたくないし…。」
私は私以上に真剣に取り組む人じゃないと尊敬できない。それ以外はどうでもいいとすら思ってしまう。
それに今は速水さんに秘書として認められるのが一番だしね。
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