3.速水さん

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「でも……そうね、市瀬さんの負担はなるなら何か対策した方がいいわね。」 「え!いや、私は大丈夫ですので。」 「いいえ、貴方は私の秘書。守るのは当たり前のことよ。」 なんか…。 速水さんの言葉ってまっすぐだから、他意はなくてもドキッとしてしまうときがある。 「ふぅ、仕方ないわね。私のオフィスルームに市瀬さんも移動するのはどうかしら。」 「え!?」 「それはいい考えかも。私も社長室にデスクあるし。巴ちゃんも近々移る可能性あるし。」 「え、そんな話聞いてませんよ?」 「あ、まだ内緒だった。」 絶対わざとだ。 とぼけたふりをしてるけど、今のは意図的。 巴もそれに気づいてるからか、ジト目に…。 「あれ、乗り気じゃないの?美桜ちゃん。」 「はぁ…なんか由美さんに手のひらで転がされてる感じなのがちょっと…。」 「会社のマドンナなのにわりと辛辣とこ、ギャップでいいわよねぇ。」 「それで…どうかしら?部屋は広いし、市瀬さんが仕事するくらいのスペースは余裕にある。でも無理強いするつもりはない。」 それは私にとって申し分ないほどの提案だと思う。 仕事に集中できる環境はありがたい。 それに。 正直に言えば辟易していた。 恋愛したくないわけじゃないし、好意を向けられるのは慣れてる。 でも。 あんな卑劣で見え透けたアプローチほど、ストレスはない。 尊敬している人を悪く言われたくないし。 それを使ったアプローチは反吐が出る。 「市瀬さん?」 「あ、すみません。少し考え込んでました。あまり負担になることも申し訳ないですし…。」 「そう。さっきも言ったけど、あなたは私の秘書で部下。だから市瀬さんを守るのは上司として当然のこと。そのためのことなら負担すらならないのよ。だから自分のことだけ考えなさい。」 「私は………。」
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