268人が本棚に入れています
本棚に追加
/61ページ
「でも……そうね、市瀬さんの負担はなるなら何か対策した方がいいわね。」
「え!いや、私は大丈夫ですので。」
「いいえ、貴方は私の秘書。守るのは当たり前のことよ。」
なんか…。
速水さんの言葉ってまっすぐだから、他意はなくてもドキッとしてしまうときがある。
「ふぅ、仕方ないわね。私のオフィスルームに市瀬さんも移動するのはどうかしら。」
「え!?」
「それはいい考えかも。私も社長室にデスクあるし。巴ちゃんも近々移る可能性あるし。」
「え、そんな話聞いてませんよ?」
「あ、まだ内緒だった。」
絶対わざとだ。
とぼけたふりをしてるけど、今のは意図的。
巴もそれに気づいてるからか、ジト目に…。
「あれ、乗り気じゃないの?美桜ちゃん。」
「はぁ…なんか由美さんに手のひらで転がされてる感じなのがちょっと…。」
「会社のマドンナなのにわりと辛辣とこ、ギャップでいいわよねぇ。」
「それで…どうかしら?部屋は広いし、市瀬さんが仕事するくらいのスペースは余裕にある。でも無理強いするつもりはない。」
それは私にとって申し分ないほどの提案だと思う。
仕事に集中できる環境はありがたい。
それに。
正直に言えば辟易していた。
恋愛したくないわけじゃないし、好意を向けられるのは慣れてる。
でも。
あんな卑劣で見え透けたアプローチほど、ストレスはない。
尊敬している人を悪く言われたくないし。
それを使ったアプローチは反吐が出る。
「市瀬さん?」
「あ、すみません。少し考え込んでました。あまり負担になることも申し訳ないですし…。」
「そう。さっきも言ったけど、あなたは私の秘書で部下。だから市瀬さんを守るのは上司として当然のこと。そのためのことなら負担すらならないのよ。だから自分のことだけ考えなさい。」
「私は………。」
最初のコメントを投稿しよう!