1.専属秘書

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「勿論。君の案件は新人では引き継ぎをしてもできないだろうし、相手からも何か言われるし。」 そこまでうるさく言われることはないと思うのだけれども。 まぁ最後までやりたいのは私の我儘で。 「あぁ、でも今のうちに伝えておこうか。今後は軽々しく引き受けない方がいい。専属しながら他の案件も手伝ってる人は少なくはないが…そうだね、多分それどころじゃなくなる。」 「分かりました。」 まぁそんな人は本当に仕事のできるベテランくらいなんだけど。 私の場合はそれぞれ両立できちゃうほど、そこまでの案件ではなかったから出来た事で。 専属となればその人のことでいっぱいになるから、余裕もなくなるだろうし。 「それで…結局誰の専属になるのでしょう?」 新人は勿論、ベテランの先輩でも受けられないような人なんて…思い当たる人がいない。 まぁ私のコミュニティの狭さもあるけど。 私が選ばれた1つ目の理由からおそらく…いや確実に忙しい人なのは間違いないと思う。 次長が少しニヤリとしてから。 トントンとノック音がする。 「噂をすれば…だな。」 ガチャリと扉を開けた人は。 「失礼いたします。」 背中まであるストレートの黒髪の女性。 背は…女性にしては少し高めだろうか。 そして目元はツリ目だけど、それが顔の綺麗さをより引き出しているよう。 美人という一言がこの人のためにあるみたい。 あれ? この人……見たことある。 確か…営業課の…。 「速水君、忙しいのによく来てくれた。」 「いえ。」 「市瀬。この方が営業課の若きエース、速水芹佳課長だ。」 「あ…あの。」 そうだ、思い出した。 私と2つしか変わらないのに20代で課長になったエースで営業成績もここ数年ずっとトップの人だ。 直接の面識はないけれど、噂はよくあるし、何より営業課の手伝いの時に遠目から見たことがあった。 あれ?でも速水課長って…。 「せっかくの機会ですけど。宮島次長、専属サポートなら必要ありませんとお答えしたと思うのですが。」 「確かに答えはもらったけどね。ただ上は君の仕事っぷりからして今後のためにもつけるべきと判断してるみたいだよ。」 「……。」 やっぱりあの噂は本当なんだ。 速水芹佳課長は基本的に一人で行動したがるという…噂。 確かに上の人以外誰かと一緒なんて聞いたことがないし、見たこともない。 それに秘書嫌い……とも聞いたことあるっけ。 そのことについては、まだ見たことないから分からないけれども。  
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