1.専属秘書

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「速水君の言いたいことも断る理由もよく分かる。でも僕としてもぜひここにいるうちの市瀬を使ってやってほしいと思ってる。」 「ですが…。」 「市瀬はまだまだ経験が浅いからこそ君のところで積ませてほしい。僕は彼女なら君の要望に応えられると思うんだ。速水君も聞いたことないかい?」 「……確かにありますが、実際に見ているわけではないのでそれだけで私は評価できません。」 あ…速水課長って……。 なるほど、そういう人なんだ。 「まぁ試しに1ヶ月…いや数週間だけでいいから一度やらせてほしいんだ。それこそ今の段階では断るほどの評価もできないだろう?」   「それもそうですね。」 「さすがに数日だけでは対応しづらいからまずは2、3週間見てほしい。そこで改めて決めてほしい。それなら上も断るなり受けるなりどっちでも納得できると思う。」 数秒ほど考えたのか目を瞑り。 宮島次長の言葉に頷いた。 「確かにその方が説得力はありそうです。それに宮島次長ほどの人がここまで言うのですから…少し興味が湧きました。」 「ありがとう。そういうことだ、市瀬。先ずは仮だが営業課の速水君の専属をしてもらう。各部署には僕から通達するけど、速水君以外から頼まれても仕事は受けないように。今抱えてる案件も早急に終わらすように。」 「分かりました。」 「では速水君。早速だが今日から頼むよ。必要なファイルとか市瀬に送って欲しい。」 「はい。ではこれで失礼します。」 そう言って速水さんは宮島次長に一礼して、チラリと私を見てから、部屋を出ていく。 私も速水さんに続くように宮島次長に失礼しますと一言伝えてからあとに続いた。 そこからエレベーターに乗り込み、速水さんは上の階を押す。 なんとなくだけど……。 多分、ついてこいってことだと思ったからそうしたけどどうやらあってたみたいだ。 秘書課はこの階で、営業課はさらに下にある。 だから会議室や倉庫がある上の階にはきっと今後のことを話すため。 ひとまずそのことにほっとした。 待ちに待った専属だけど…誰よりも大変だと思うから次長がくれたこのチャンス…無駄にしないようにしなきゃ。
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