恋に食まれて

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 りくをつまんだままの巨体が立ち上がる。急に視界が高くなって血の気が引く。揺れて脳みそがぐらぐらする。 「ギャァアアアアアス」  怪獣の光が大きくなった瞬間、視界が揺れて、暗くて湿った場所に放り込まれた。 *  真っ暗だ。  あたたかくて湿っていて窮屈。ところどころ、特に足元が濡れていて上靴が濡れる。  半分はぶよぶよやわらかくて、もう半分はかたい壁みたいな場所にりくは放り込まれていた。  足場もなくて、とにかくやわらかい壁を押しのけてりくはかたい壁にすがる。かべとやわらかいものに囲まれて、急激な振動に吐き気とめまい、せりあがってくる胃液を我慢する。  車酔いのひどいやつ。揺れるし、さらに最悪なことに踏ん張れない。  怪獣に飲まれたのかな。怪獣より大きなやつに食べられたのかな。  体に痛みはない。ただ強烈な揺れと酔い。真っ暗な中で重力の向きもわからない。  手探りで何かないかと探せば、ちょうど肩幅ぐらいの等間隔に、壁に穴が開いていた。穴に腕を突っ込んで抱きつくようにしがみつく。  ぎゅうぎゅうで、揺れがひどくて、よくわからないにおいがする。
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