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りくは目をつぶってしがみつきながら、ひどくつらいのに、なんだかよくわからない安心感を感じていた。かたい壁にしがみつけば、柔らかな壁がぎゅっと背中を圧迫する。
ここはどこだろう、怪獣は、あの大きなものは、どうなったんだろう。音はぐわんぐわんとトンネルの中みたいな低い音が響いて、怪獣の咆哮や大きなやつの声は聞こえない。
くらくらする意識の中で感じる急激な振動の中で、抱きしめられているみたいな圧迫への安心感。
守られているような、抱きしめられているような、変な感じ。
満員電車の、つり革も手すりも持たずに足も地面から浮いてもみくちゃになってるとき、姿勢の制御をあきらめた後にくる、妙に心地いいみたいな感じ。
ぎゅうう、やわらかな圧迫が強くなる。
苦しい。苦しいのに、気持ちいい。息が荒くなる。どきどきする。胸とお腹がきゅんきゅんする。しがみつくのに精いっぱいなのに、どきどきして安心してじんわり甘いような感覚。
心臓のどきどき。胸とお腹のきゅんきゅん。これはなに?
唐突に、揺れが収まった。
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