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薄く、光が差し込む。光に照らされてみれば、赤くやわらかいものに囲まれ、しがみついているかたいものだけが白い。
目を回すりくを、また入ってきた二本の柱が宙ぶらりんにする。
*
状況を理解できないままに、りくはゆっくりと地面におろされる。足がふらついてしりもちをつく。
雨はまだ強く振っていて、あたりは真っ暗。
後ろを見れば、倒れた怪獣の開いたままの瞳があった。
強烈な悪臭、卵が腐ったみたいな、髪の毛を燃やしたみたいな、もっとひどいやつ。
手で鼻をおさえながら前の方を振り向いて、見上げれば大きな瞳。もうひとつ瞳、鼻、巨大な顔だけど、でもどこか見覚えのある二重も、目の下のほくろも、知っている顔によく似ていた。
「うみ……?」
大きなこれは、うみ?
ずっと守ってきたうみが、大きくなって、私を守ってくれた?
この大きな存在はうみだとわかるのに、頭の中のうみとイコールにならない。
校舎を壊しちゃうような怪獣をうみが倒した? あの泣き虫だったうみが?
呆然としている中、雷の音が鳴り響き、あたりがぴかりと光る。りくは目をつぶる。目を開けたら、既に目の前の巨人はいなかった。
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