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りくは、どしゃぶりの運動場に呆然と座ったまま、どきどきしていた。服がからだに張り付いている。火照った体に、雨水が冷たい。靴の中までがぐしゃぐしゃで、靴底にたまった水を踏みしめて歩き出す。
怪獣がやってきて、校舎が壊れて、うみが巨人になって守ってくれた。
どきどきが収まらない。唐突に思い出す、落ちる前に告白された、泣き笑いみたいなうみの表情。
「レンアイ的な意味で好き」
ねえ、うみ、これは、「好き」なのかな。
運動場の端っこから、うみが走ってくる。たどたどしい走り方だ。途中で足をまろばせて一回転ぶ。
「りくちゃん! だいじょうぶ?」
「うみ……あれ、うみなの……?」
「……うん。ごめんね、食べちゃった」
雨がざあざあ降っている。うみはにこにこ笑っている。
「えへへ、潰さないようにって思ったら、ほっぺたしかなくて……嫌いにならないでいてくれたら、うれしい」
ざあざあ降る中で、はにかんだ笑みで立っている小さな女の子は、うみだ。ずっと守ってきたうみだ。大きくなれることを隠していたことじゃなくて、さっき、口の中に放り込んだような、ずれたことを一番に謝ってくる、うみはりくのよく知るうみなのに。
「うみ、ありがと、でも、ちょっと……」
「みんな無事かー! 集まって避難するぞ!」
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