恋に食まれて

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 雨の中、壊れた校舎から生徒や教師がぞろぞろ出てくる。放課後遅い時間だったから数は多くないけれど、教師たちが集合を呼び掛けて状況を確認している。 「行こう」  りくはうみの手を取った。  手の中の、自分より小さなうみをりくはずっと守ってきた。  今のうみの手に触れたって、あのしびれるような、安心するようなどきどきは湧き上がってこない。  人の輪に交じって教師に誘導される間、校舎から家に帰るまで、手を握ったまま二人は一言も話さなかった。 *  りくは、今日のことを一通り思い出してぶくぶくと口だけ湯につけてあぶくを立てる。  お湯が温かく、切り傷にぴりりとしみる。お湯は確かに重いけど、でも、あの口内のようなどきどきも安心感もない。  あの圧迫感。果てしなく安心して、でも胸やお腹の奥がきゅんきゅんと興奮する感じ。 「レンアイ的な意味で好き、か……」  うみは大きくなる前にそう言った。  小さいうみは、大事な友達だけど、でも友達なのだ。レンアイ的な気持ちは全然ない。そもそも、レンアイとは、恋とは? 「あの大きいのなら、あの大きいのに、また……」  レンアイ的な意味。  恋とは。  心臓のどきどきと、胸とお腹のきゅんきゅんが恋ならば。
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