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「たぶん……気づいたときには運動場にいたし。すごいおっきかった」
両手を大きく広げて大きさをアピールする。おどけたしぐさ。
大丈夫。だいじょうぶ。
いつも通りのパパと、いつも通りの玄関に安心する。
怪獣が出てきて色々あって、世界が一変しても変わらないものは変わらない。
「本当に無事でよかった……友達も、うみちゃんもケガとか無かったか?」
「うん。一緒にいたから、平気だよ」
うみ。幼稚園からの幼馴染の名前に、りくの心臓は高鳴る。動揺は、顔や、声に出てないかな?
みつあみの揺れる幼馴染。
仲のいい一番のお友達だった、彼女。
『お風呂がわきました』
部屋の奥から電子音が鳴る。
「ごはん用意しとくからお風呂入っておいで、びしょぬれだ」
「ありがと、パパ」
怪獣が出てから、いや、怪獣の出現の少し後からずっと暗く雨が降り続いている。
つけっぱなしのテレビのニュース、豪雨で映像が不鮮明だが、怪獣と対峙する巨大な影が映っている。
*
「平気な訳ないじゃん……」
脱衣場、りくはびしょぬれのセーラー服を脱いで洗濯機に入れる。スカートの腰につけたくまのキーホルダーを、ちぎるようにはずして棚に置く。
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