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怪獣。土砂降り。ピンク色のくま。今日会ったいろいろ。「レンアイ的な意味で好き」とか。
「スキ、とか、最低じゃん……」
無かったことにはならない現実、怪獣が現れなければ、なんて、もう言ったって遅いのだ。
*
怪獣が現れたのは、もうほとんどの生徒が下校した後だった。
最終下校のチャイムが鳴るまで、りくとうみは教室、窓際の席で自習していた。うみの数学の課題が終わらなくて、りくが手伝うのは常だった。
最終下校のチャイムが、ちょうどスピーカーを揺らし始めた、瞬間。
チャイムが鳴ると気づく、その予感を、暗黒が覆った。
夕暮れの赤に染まる教室が、一瞬、たった一瞬間に暗い影が落ち、刹那の違和感、そうして、壁や窓ガラスが突然壊れる。削りとられる。
「ゥギャアアォオオオオオ」
響き渡る咆哮。かき消される最終下校のチャイムの音。
瞬く間もない数秒の出来事だった。
壊れた教室。がれきと埃が舞う。廊下側に残っていた生徒は一目散に逃げていき、窓際にいた二人だけが教室に、壊れる世界に取り残される。
りくは、とっさに、うみをかばうようにとびかかった。うずくまるようにしゃがんでも、風が吹き込んで壁の破片で体が汚れる。
「うみ、平気!?」
「うん、りくちゃん、だいじょうぶ……」
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