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また、怪獣が鋭い爪のついた手を振り回す。天井が崩れる。うみとりくの間にがれきが落ちる。砂埃が舞うのに、うみは動じない。震える足で、立っている。
「うみ!」
「あのね、わたし……りくちゃんが好き! お友達としてじゃなくて、レンアイ的な意味で好き」
うみは外に背を向けて、りくの方を向いて、言った。ぎゅっと、腰のベルトにつけているくまのキーホルダーを握る。ふたりお揃いのくま。
「うみ、そんな場合じゃ……」
「ごめんね。できたら嫌いにならないで、ね」
だいすきだよ。
笑って、うみは壊れた壁の方に身を投げた。
ほどけた三つ編みがふわり、宙を舞う。
次の瞬間、突然雲が暗くなって、雨が降りだす。どしゃぶりで、横殴りの雨が校舎に吹き込む。
「うみ!」
雨も気にせず、りくはがれきを踏んで崩れた壁にかけよる。ここは五階だ。だのに覗き込んでも、地面にうみの姿はない。
突然の落雷、稲光。
まぶしさにりくが目をつむった、次の瞬間、巨大なもうひとつの影が現れた。
ひらり、目の前で大きな幕が揺れる。雨が巨躯に阻まれて、ぱらぱらとはねた水の粒だけがりくの頬に当たる。
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