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風で髪の毛が揺れる。用をなさない壊れた壁から雨が吹き付ける。腕でかばいながら身を乗り出してみれば、目の前に立ちそびえる大きな影。
怪獣は牙や口が見えたのに、目の前の巨躯は見上げても大きさが分からないぐらい大きい。
巨躯が一歩、右から左に動く。地面が揺れ、雨が吹き込む。
どしん、どしん、巨大な足音が耳を揺らす。黒い布で覆われた視界の右の方から、ふわり、現れたのはピンク色の物体だった。
「今度は何……?」
ピンク色のくまが空中でぶらり揺れている。
かわいいピンク色のくまと、りくは目が合う。見覚えのあるくまをそのまま大きくしたような、着ぐるみぐらいのサイズになったくまが大きな黒い影にぶら下がって目の前を揺れて通り過ぎる。
「うみ……?」
弱虫で、泣き虫で、いじめられっこで、りくが大事にまもってきたうみ。
だいすきな友達。でも、レンアイ的な意味じゃない。
大好きな友達だから守りたいってだけ、それだけだったのに。
大きな影が動く。地震みたいに校舎が揺れる。りくは壊れた壁にしがみつく。
どおん、大きな音がして、恐る恐る目を開けたら、左の方が妙に明るく光っている。
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