恋に食まれて

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 くまのぬいぐるみのキーホルダーは小学校の修学旅行で、うみとおそろいで買ったもの。ずっと中学に入っても3年間、おそろいでつけていたからピンクの布地は薄く灰色に汚れている。  びしょぬれの下着を、はりつく肌からめくって脱ぐ。ぐしょぐしょのタイツからようやく解放されて、ポニーテールのゴムもはずして裸になる。  浴室の湿気が冷えた肌に気持ちいい。がれきで切ったのだろう、肌のあちこちがぴりぴり痛む。シャワーで全身を流せば少し気持ちも落ち着いた気がした。  ひとしきり洗ったら、湯船につかって浴槽にもたれる。白い浴槽に、きゅんと変な感傷、手のひらで撫でる。 「こんな感じだった、濡れててあったかかったけど、もっときゅうくつで……」 浴槽にもたれかかる。口だけ湯につけてぶくぶくと息を吐く。 「うみの中……あったかかったな」  呟いて、違う違う、自己嫌悪してお湯に潜る。ざぶん、怪獣が出てからのいろいろを打ち消すために頭まで浸かって、お湯の中で目をつぶって十数える。  でも、水面に浮上して目を開けても景色は変わらない。
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