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ココが寝部屋ならばどれほど良かっただろう、と思いながら真上にある月を見つめた。
ふかふかな布団とは違いどこまでも固い。
夕方から夜へと涼しげな夏頃のこと。
追われる身となり逃げる途中に草履をどこかに置いて来た。
爪先に目を落とすと、爪の内部まで土が入り、泥だらけの両足。伸ばし切った髪が無造作に荒れる。
誰かの屋敷に建てられた壁へと背中を預けた。
「はぁ、はぁ・・・・・・っ!」
ぽたぽたと紅色の水滴が流れ落ちる。
これ以上零れ落ちないよう胸元を手で強く押し込んだ。
「うわっ、お前さん。どうしたんだ!」
壁の向こうには角があり、そこから曲がってきた男が勝手に驚き出す。
その拍子に提灯を落としそうになったが体勢を持ち直した男。心配そうにこちらへと駆け寄ってくる。
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