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今日を迎えるにあたって、俺は周到な準備をしてきた。初めてカホが自室を訪れるということもあって、掃除はもちろん、少しでも気に入ってもらおうと、家具を新調するほどに気合十分だった。ただ、張り切りすぎて部屋のレイアウトを最後まで悩み、さっきまで作業を続けていたおかげで、昼食を食べるのが遅くなってしまった。だがぎりぎりまで考え抜いた甲斐あって、納得のいく空間ができたので満足である。冷蔵庫には、以前カホが気になっていると言っていたケーキ屋のケーキも用意してあるし、後は何かBGMを流せば、迎え入れる体制は完璧である。部屋を見渡し、不備がないことを確認したところで、昼食の後、歯を磨いていなかったことを思い出し、俺は洗面所に向かった。
洗面所には、洗面所全体を照らす室内灯と、洗面台に備えつけの電気があって、俺はこの時、室内灯は点けずに、洗面台の電気を点けた。洗面台の電気は、スイッチを押してから点くまでに数秒のタイムラグがある。だが洗面台のどこに何があるのかは、手探りでも分かるから、電気が完全に点くまで多少見えなくても大丈夫だ。
洗面台の電気のスイッチを押し、俺が歯ブラシを手に取り、歯磨き粉をつけたあたりで電気が完全に点いた。俺は、明るくなった視界の下、鏡に映る自分の姿を確認する。普段自分の部屋にいるときは、髪の毛をセットすることはないが、今日は軽めにセットもした。整えた髪に、おかしなところがないか確認するように、歯を磨きながら、鏡の前で顔の角度を変えながら見ていく。
よし、大丈夫そうだ、
と思ったところで、ふと、鏡越しに自分の後ろで何かが動いたのに気が付いた。
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