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俺は息をのんだ。と同時に息も吐き出さないまま、つんのめるように浴室から出て、勢いよく戸を閉めた。戸が開かないように手で押さえる。というより震えで思うように手が離せないという方が正しいかもしれない。息をのんだ衝撃で、声がうまく喉を通らず、ただ荒い呼吸が口から漏れ出す。頭の中で、声にならなかった叫びがこだました。
何なんだ何なんだあいつは!!どっから入ってきやがった!!
錯綜する頭の中で、今見た光景がフラッシュバックする。
そいつは黒い装いをし、俺が驚き慌てても、ただこちらに背を向け、全く動く様子を見せなかった。
俺が浴室を確認していた時も、ずっと後ろで見ていたのか?
そう考えると恐怖がさらに加速する。こうしている今も、浴室の中は動きがないようだ。だがその静けさが、より異様に感じられて、不気味さを煽っている。
混乱や戦慄で、タカが外れたかのように響く鼓動が体を突き破りそうだった。しかし脳は何とか落ち着こうと、意識を研ぎ澄ませようとする。その狭間で思考が引っ張られ、今にもはち切れそうだった。
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