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短編〜プロローグ
その人は四季折々であだ名が変わる。
春はピンクさん、夏はミドリさん、秋はキイロさん、冬はギンイロさん。
「桜なの、俺。実は広葉樹でした〜」
髪、傷みそうですね、と言ったら、そんな答えが返ってきた。
「秋は黄葉してるってことですか?」
「そう。春は花が咲いてる」
「…冬には葉が落ちてなくなるのでは…?」
その言葉にミドリさんはキョトンとして、すぐに鼻に皺を寄せ、大きく口を開けて笑った。
「それ初めて言われた。樹の姿だったらそうだけどさ、一応冬も栄養摂ってるから、俺は」
「そういうものですか…」
ただ、会話の糸口が欲しかっただけの質問。
冗談とも本気ともつかない答え。
(そういうトコ…!)と内心身悶える。
「この先も毎年、お花見できたら嬉しいです」
控えめに言った私に彼は嬉しそうな笑みを向け、うん、と小指を絡ませてくれた。
end
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