これは罰ゲームですか?

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 わたしは考えた。小さい体の小さい頭の中の小さい脳ミソをフル回転させて考えた。  騙されてるのかな? 冷やかし? こんなところでこんなタイミングで冗談を言うとは思えないけど……向かいの店舗の人めっちゃ見てるし。でももしかして、尻軽だと思われてるとか? ヤリ目? ……どうしても、そういう風には見えないんだよなぁ。  だとしたらあれかな、もしかして、これは彼の意思に反した見えない力が働いた何かなのかな。やらざるを得ない何かの理由が……  「あの……罰ゲームかなにかですか?」  「……へっ?」  「なんか適当な女と連絡先交換してこい!みたいな、そういうミッションとかなんでしょうか?」  単純に、あまりにも、不思議過ぎて。理解が追い付かない中で思考を巡らせた結果、こんな間抜けな質問を単刀直入に相手に投げかけてしまうということになったのだけれど。  そのとき、彼の顔色が、さっと変わった。  「俺が知りたいからです。亜都実さんの連絡先を、っていうか亜都実さんのことをもっと知りたいんです。俺が連絡先を聞くの、そんなに変ですか? まあ確かにほとんど接点なかったから驚かせちゃったとは思うんですけど、でもこういうのって、時間の長さとかじゃないですよね? 俺、亜都実さんに会いたくて今日他の仕事何とか切り上げて来たんです。亜都実さんが一人になるタイミングをうかがってずっと待ってて……だからほんとに、冷やかしとかそういうんじゃないんです。信じてもらえませんか?」  真剣というか、必死というか、むしろ、少し怒りの滲むような、苦し気な顔に見えた。そこでわたしはようやく気付いたのだ。今わたしは、彼を傷つけてしまったのだと。信じようとせず向き合おうとせず、ひたすら自分が傷つくのを避けようとしたせいで、彼のことを傷つけてしまったのだ。  わたしがしているのは、れっきとした美形差別だ。見た目で惚れない、判断しないと言いながら、しっかり見た目で避けようとしている。こんな見た目の人が自分に興味を持つなどあり得ないと断定して、逃げようとしている。  …… でも実際、彼がわたしに興味を持つ理由など、本当に一切一ミリもわからないから混乱は解けない。  「変なことを言ってごめんなさい。連絡先、これでいいですか?」  わたしはSNSのアカウントを見せながら、真っすぐ彼を見据えた。わたしも、もう少し彼のことを知りたいと思った。
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