これは罰ゲームですか?

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 「それこそ、業界が同じ彼に相談してみたらいいんでねぇの? 場合によっちゃ、その返答で人間性もわかるかもしれんだろうし。」  「……そういえば、なんでこの業界にいるんだろう、彼。」  「ほら、話のきっかけなんていくらでもあるだろ? くすぶってるくらいなら、あっちゃんの方から切り込んでったってなんの問題もないんだから。人となりを知るってのは、第一歩なんじゃねぇか?」  それもそうですね、とわたしは妙に納得した。仕事にせよ彼のことにせよ、このところのわたしはどうにも及び腰だ。メソメソクヨクヨは性に合わない。進まないなら、進めよう。前進あるのみ。とりあえず、アルコールはありきで。  「そうします。連絡してみる。」  「そうそう、その調子。やっぱりニンニク絞っとく?」  「……理性で耐える!」  大将はやっぱり笑いながら、別のお客さんの会計に行った。わたしはスマホをそっと手に取り、酔いに任せて、気の向くままにメッセージを入力した。  【ラーメンは何派?】  入力してからさすがに己でも笑ってしまったが、単刀直入に、これがわたしだ。後からボロが出るより、初めから包み隠さない方がいい。彼にはそうしてわたしの実体を知った上で、身の振り方を考えてもらいたい。  すると、ほんの数十秒後に返信がきた。  【味噌派です、出身が札幌で】  そうなんだ……札幌か、いいところだね。そういえば出身地など何も知らなかったことに今更気づいて、この数日一体何を会話していたのかと顧みてしまった。  【味噌、美味しいですよね。札幌、いいところですよね。】  【ありがとうございます、いいところですよ。いつかお見せしたいです】  思わず、ふふっと笑みが漏れてしまった。やっぱり、なんかかわいい。  【いいですね、ぜひ案内してください】  【まかせてください!ところで亜都実さんは何派なんですか?】  【豚骨コッテリ】  【いいですね、今度オススメのお店教えてください】  【まかせてください!】  【やった!たのしみにしてますね!】  ふふ。  ……あれ、なんだろう。この、ぽわっと温かくなる感じ。  今のわたし、かなり気持ち悪いと思う。だって、スマホ見ながら笑っちゃってる。大した会話をしたわけでもないけど、でもなんというか、会話のテンポが、心地よかったというか。  【次のお休み、いつですか?】  【明後日の木曜かな】  【じゃあ水曜の夜ご飯一緒にどうですか?京丸の近くに美味しい札幌ラーメンのお店があって】  そこで、一旦わたしの手が止まった。2人でご飯、か……。夜、だけどラーメン、だし。たぶん、本当に純粋にオススメしてくれてるだけなんだろうな。嬉しいような、ちょっと肩透かしなような、何とも言えない気持ちではあるけど。でもなんていうか、そういうところも、いいな。  【あ、でもやっぱりとんこつの方がいいですよね?】  【味噌いいですね!ぜひ】  【やった!やった!めっちゃ仕事早く切り上げてきますんで!】  【わたし遅番なのでゆっくりで大丈夫です】  【すいません気合入り過ぎました!】  ……なんだこれ、楽しい。  わたしは久しぶりの高揚感を抑えきれずにいた。なんかいいな、こういうの。なんかいいな、宇田川くん。水曜日がガゼン楽しみになった本当の理由は、味噌ラーメンではないと認めざるを得ないわたしなのであった。
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