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七輪の上に鶏肉が置かれる。
シュウシュウと音を立てるお肉を、二人でわくわくと眺める。
ふ、と思い出して、わたしは彼に尋ねてみた。
「キミ、ここら辺は初めてなの?」
聞こえるように言ったはずだが、彼は目を輝かせて七輪を眺め続けていた。全く聞いていない模様。
だんだんと肉に火が通りはじめた。
板さんがひっくり返して、塩をぱらりと振る。
興奮している彼の隣で我に返る。
……ここまでなんとなくご一緒してしまったけれども、この青年は大丈夫なのだろうか?というかそもそも、なんでコイツはこんなに親しげにしているんだ?(まあそれを受け容れているわたしもわたしだが)そして一軒目はあんなだったからわたしが会計したが、
この子、お財布持ってるのか???
わたしの疑問などどこ吹く風で、鶏肉は焼き上がった。
「はい、ささみ大葉のせ。これ、梅肉ね、お好みでどうぞ」
そう言って平皿に二串のせた板さんは、わたしたちの間にそれを置くと、振り返って次の仕込みを始めた。
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