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一方、七輪のハツは板さんの手でタレに浸けられて、芳ばしい香りをさせていた。
焼き上がりと同時にご飯が運ばれてきた。
「ハツ丼にしても、卵かけご飯にしてもイけますよ!!」
そう聞いて、わたしは卵かけご飯、彼は串から肉を外して丼を作っていた。
ハツはぎゅっと弾力のある噛みごたえで、しかし切り込みが入っていたのでさっくりと歯切れが良く、タレの甘じょっぱさも丁度よかった。ご飯の卵も濃厚で、口の中がこってりに満たされていく。
右隣の彼はわしわしとハツ丼をかき込んでいた。
お酒も空になって食に夢中になっていたわたしたちの隣、奥の席で静かに呑んでいた男の人が突然、口を開いた。
「よう、桐生さん」(どうやら板さんを呼んだらしい)
「ん?どうしたタカオ」
「一曲弾いていいか?」
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