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第一縁 おいしい焼き鳥の食べ方
店の見当がついたので繁華街へ向けて夜道を歩く。彼は道も知らないくせに、楽しげにわたしの前を歩いている。
柑子色の短髪に若草色の浴衣、声は少し高めで、背はわたしと同じか少し低いくらいだろうか、かわいい。
目的の店に到着する。明るい電飾の看板で清潔そうな店だ。ネットの評価も高い。
「らっしゃーせー!」
自動ドアを抜けると元気のいい声が飛んでくる。カウンターでは仕事帰りであろうスーツの男性たちが大声で、大将らしき人物と談笑している。奥のテーブルでは合コンでもしているのだろうか、黄色い声が聞こえてきた。なかなか賑わっている。
入り口近くのテーブル席へ案内された。
「本日のお通しは菜の花の酢味噌和えです!お飲み物どうなさいますか?」
「わたしは生で。キミはどうする?」
そう言いながら彼の方へ目をやると、
彼はなんだかもう我慢がならないといった風で、
「こんな店やだよ、他のところへ行こう」
と、そこそこ大声で言い放った。
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