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そろそろ帰ろうかと思い、最後にわたしは彼に三度目の質問を投げかけた。
「キミ、家はこの辺なの?」
すると案の定彼はその質問には答えず、
「また遊ぼうね、おやすみなさい」
と言って立ち去ろうとした。
「ねえ、キミ——」
わたしがもう一度同じ質問をしようとしたときだった。
突風が吹いてわたしは一瞬、目を閉じた。
顔を上げてみると、彼はもうそこには居なかった。
念のため、ぐるりと辺りを探し歩いてみたけれども、どうやら逃げられたらしかった。諦めて帰ろう。
ふんわりとしたお酒の余韻を感じながら空を見ると、雲が晴れ、月明かりが射していた。
家に着き、鍵を開ける前にふと自転車のチェーンをいじってみたら、簡単に直った。
こんな風にして、わたしは彼と知り合った。
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