第二宴 おどれ!コマイちゃん

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第二宴 おどれ!コマイちゃん

 お風呂を……溢れさせてしまった。  自宅でまったりと読書をしていたら、突然仕事の連絡。 「どうしよう、中島さん……」  要するに、現場にいる人間では二進(にっち)三進(さっち)もいかないから、わたしに来てほしい、ということだった。 「今いいところなのに……」  相変わらずわたしは独りごちて、先日直った自転車で職場へ向かう。夕暮れの風が心地よい。  「すみません、お休みのところ……」  助けを求めてきた後輩のカァちゃん(烏山さん)が、申し訳なさそうに状況説明を始めた。  カァちゃんの話を聞くところによると、どうやらちょっとした言葉のすれ違いが重なりに重なり、 「最初からお話が通じていなかったことに気付いたときにはもう……お客様が怒っていらして……」  と意気消沈のカァちゃん。 「おけおけ、だいたいわかった。お疲れさま、あとやっておくから、ゆっくり休んでな〜」  と、まるまる引き受け、謝罪・説明・補填、その他諸々を済ませて解決。  ひと段落してカァちゃんに現状報告と、アドバイス。 「まず、気付いた段階で助けを求めたのは二重丸!あとはまあ……」 「はい、はい、あ、そうですよね!そうかぁ、そういうふうにすれば良かったのか……ありがとうございます!ていうかごめんなさい……」 「まあまあいいからいいから!今度ご飯食べ行こうね!」  どっと疲れた。  帰宅して湯船にお湯を張りはじめ、今後想定し得る最悪のケースのことや、さっきの対応で大丈夫か?などと反省をしていたら、  気付いたときには、湯船がたぷたぷしていた。  やっちまったー!  と思いながらじゃばあ〜っとお風呂に浸かり、 「こりゃダメだ、呑みに行こう」  と、公園へ向かった。  空は月が見えぬほど雲がかっていたので、念のため折り畳み傘を持って行った。
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