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先日は青かったアジサイはもう散り、別のところに赤いアジサイが咲いていた。
ベンチに座って何を食べようか思案していると、
「やあ」
と、彼の声がした。(待っていたわけではない、待っていたわけでは、ない)
「おお、また会ったね」
喜びを抑えて挨拶をする。
実のところ、なぜか、今夜は彼に再会できるような気がしていた。
あるいは、会えればいいなあ、と思っていた。
今日の王子さまのいでたちは——わたしは心の中で彼を、王子さまと呼ぶことにした——水色から白のグラデーションがかった浴衣に紺色の帯をしていた。
「キミやっぱりこの辺の——」
わたしが訊こうとするやいなや、
「今日はお魚が食べたいね!」
と王子さま。や、食べたいけれども。
「どこか、知ってる?」
……鮮魚居酒屋探しを始めた。
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