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ネット検索は王子さまに封じられてしまったので、繁華街から良さげなお店を足で探す。
わたしはもう、腹ぺこへろへろなので、ここでいいじゃん、と思うのだけれども、王子さまはそんな店には見向きもしない。
引き戸の古風な店構えの前で、ふと彼が立ち止まった。
「こことか、どう?」
「ん、いいんじゃない?」(こちとら腹ぺこよ)
カラカラと戸を開けて、店内を眺める。
店員さんがなかなか来ない。
王子さまはひまそうに、店先の風鈴を扇子であおいで、チリンチリンしていた。
その音で気付いたのか、
「いらっしゃいませ〜!」
と若い店員さん。カウンターに案内された。
今日は最初から日本酒を頼むことにした。
「このお酒、なんて読むんですか?」
読み間違えると恥ずかしいので、わたしは知らないお酒はいつも読み方を訊くことにしている。
「えっと……ちょっと待っててください!」
一瞬の間の後、店員さんはそう答えて足早に店の奥へと引っ込んだ。
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