12人が本棚に入れています
本棚に追加
カラカラと扉を開けると、
「いらっしゃぁい」
とまろやかな声がした。
「あら、姉弟でお夕飯かにゃ?」
猫みたいな口調のおねえさん、奥には杉玉のような豊かな髪を蓄えた板前さんがいる。
「赤の他人です」
まだ少し、前の店でのいざこざにもやもやを残していたわたしは、少しぶっきらぼうに答える。彼はなんだか恥ずかしそうにあわあわしていた。
「そうかいそうかい、じゃ、赤二名様、ごあんなぁい」
おねえさんはわたしのとげとげした態度なぞひらりと躱して、踊るように席へ案内してくれた。
コトリ、と静かにお通しの小鉢が置かれる。
「今日のお通しはアスパラの胡麻だれでーす」
輝かんばかりに青々としたアスパラに、ふんわりと豊かな胡麻の香りが食欲をくすぐった。
二人揃ってひと口いただく。
うっま
彼と目を合わせて驚く。
すかさずおねえさんは、してやったり、というような顔をして、
「ふふふ、うまかろ?」
と言って続けた。
「お二人さんとも、お酒は好きですかな?今日、いいのあるんですよお」
「キミ、お酒は呑むの?」
「はいっ」
彼はとびきりの笑顔でそう答えた。(くそう、かわいい)
「じゃあ、オススメのやつ、冷やで入れますねー」
最初のコメントを投稿しよう!