仮定:「人類は自らの滅亡を望んでいる」を証明せよ

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本人の言うとおり、人の思念を具現化(マテリアライズ)する研究において、博士は第一人者だった。 「わし自身の見た、『七色の流星が降る』という夢を具現化させたのは、カエデやお前が生まれる以前のことだ。それ以来、わしはずっと天才だ」 タイラは首を左右にふった。 大学院生になって以来、ずっと助手をやってきた彼には分かる。 今のサトー博士に理屈は通らない。 何をどう言っても、聞いてはくれないだろう。 博士は彼に思念物理学の面白さ、奥深さを教えてくれた恩師であった。 ふだんは穏やかな人柄なのだが、許容量(キャパシティ)を超える負荷(ストレス)がかかると攻撃的になる。 困ったことに、博士の精神的負荷の許容量は、わりと低めの設定だった。 実験の失敗、論文の締め切りなどで、すぐに限界値(リミット)に達してしまう。 愛娘カエデが誰かのになる、そう考えた瞬間、一気に限界を超えたようだ。
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